プロマーはルワンダの農林水産業に関する調査を実施しました。ルワンダの外貨獲得手段のうち、エコツーリズムは最も重要な要素です。2010年の観光産業による外貨収入は207百万米ドル(約160億円)にのぼり、主要な2大輸出産品であるコーヒーと紅茶の輸出額(69百万米ドル)を大きく上回っています。主な観光名所は、野生のゴリラが生息する火山国立公園、チンパンジーや猿が生息するニュンゲ熱帯雨林国立公園、サファリのできるアカゲラ国立公園の三か所で、いずれもレンジャーや警備隊らによって入場が管理され、自然環境が厳しく保護されています。特にゴリラはルワンダ観光の目玉で、ゴリラの保護と繁殖に努めるため、一日当たりの人数を30名に制限する一方で、国外在住の外国人の場合の入場料は2007年に1人あたり250ドルから500ドルに値上げしており、今後さらなる値上げも想定されます。こういった観光収入は、近隣地域の雇用や社会環境に大きな影響を及ぼしています。
2012年01月11日
ルワンダのエコツーリズム
2011年12月07日
特別レポート:TPPと日本の農業(英文)
日本の環太平洋戦略経済連携協定(TPP)交渉への参加表明を受けて、プロマーでは農産物に係る面において、日本の参加がもたらす機会と課題に関して一連のレポートを執筆します。第一回では特にセンシティビティの高い乳製品、砂糖、コメ、豚肉、牛肉の5品目について概要をとりまとめています。今後これらの品目やその他のTPPの農産物市場に係る観点についてより深い分析を行ってきます。
2011年12月02日
インドネシアでコーヒー生豆の残留農薬問題
プロマーは、2011年9~10月にインドネシアでコーヒー生豆の残留農薬問題に関する調査を実施しました。インドネシアは、ブラジル、コロンビアに次ぐ日本のコーヒー輸入相手国ですが、2009年以降コーヒー生豆から厚生労働省の基準値を超えるカルバリル(殺虫剤の有効成分)が検出され輸入の障壁となっています。インドネシアの農業省やコーヒー輸出業者協会(AEKI)はカルバリルの使用を禁じていますが、こうした規制は生産現場では徹底されておらず、今後短期間の内にカルバリルの残留問題が解決されるかはやや疑問です。
インドネシアではコーヒー生産量の96%が小規模農家によって生産されており、小規模農家はアリの駆除に殺虫剤を使用しています。アリはコーヒーの木に害を及ぼすわけではありませんが、コーヒーの実を収穫する際に手を這ってきて咬まれることがあり、収穫作業の妨げになります。小規模農家はアリ駆除を目的として、収穫直前にカルバリル等の殺虫剤を使用するため、残留リスクが高くなります。
インドネシアの農業省は、全ての州政府に対して、コーヒーに対するカルバリルの使用を禁止する旨の通達を送っていますが、政府間の意思伝達が十分ではなく、生産地域の農業指導員や小規模農家はこうした規制を認識していません。また、主要生産地域の1つであるランプン州のAEKI事務所では、小規模農家のためのトレーニングセンターを設立し、カルバリルを使用しないよう勧告していますが、有効な代替手法は見出せていません。
日本の業界団体は、インドネシア政府へ問題解決の要請を行っていますが、現在も生産現場ではカルバリルの販売及び使用が続いており、今後も引き続き注意を払う必要がありそうです。
2011年11月25日
中国のししゃも事情
プロマーは中国のししゃも加工・消費について調査するため、中国東北部遼東半島に位置する大連を中心に現地調査を行いました。大連は野菜や果物等の農業や漁業、水産加工業が盛んな中国第3の港湾都市で、日本向け水産加工拠点の一つにもなっています。都心部には高層ビルやショッピングモールが立ち並び、海に近い景勝地も多く、ビジネスや観光の拠点としても知られています。
中国では魚は一般的に高級な食材として知られ、高所得者層の増加を背景に水産物の消費も伸びています。ししゃもはこれまで主に日本向け加工のために輸入されてきており、中国国内での消費は日本食レストランが中心でしたが、大連では今年から大手外資系スーパーでししゃもの取り扱い始めており、今後比較的安価な水産物として消費が伸びていくことが期待されています。
一方、ししゃもは中国一般の消費者にとってはまだまだ馴染みの薄い商品で、聞いたことも食べたこともないという人が大半です。ししゃもが一般に普及しにくい背景の一つとして、中国の一般家庭には日本の家庭では一般的なグリルがないということが挙げられます。今後消費を増やしていくためには、フライにするなど、家庭での食べ方を宣伝していくことが必要だと業界関係者は話しています。ちなみに中国では子持ちししゃもは多春魚(Douchun yu)、オスは公魚(Gong yu)と呼ばれ、日本と同様子持ちししゃもが人気です。
写真 日本食レストランのビュッフェ
2011年08月30日
TPP実現を横目に急展開を迎えた日中韓FTA-日本の農業に対する影響は?
TPP実現を横目に急展開を迎えた日中韓FTA-日本の農業に対する影響は?
日中韓FTAは、遡ること1999年には三国首脳会談において共同研究の開始に合意、以来研究が継続されてきました。しかし中韓両国の対日貿易赤字拡大の懸念や農業問題等があって実際の交渉開始にはなかなか至りませんでした。ところが近年、米国やオセアニアが積極的に推し進めるTPPの実現化に向けた議論が盛んになるにつれ、日中韓ともに東アジアの経済圏形成を急ぐ必要が認識されるようになり、日中韓FTA推進の動きが再び活発になっています。
日本の農林水産物輸入では、中国は米国に次ぐ2位で、日本の大幅な輸入超過、韓国からの輸入は13位ですが、同じく大幅な入超です。右表にみるように、日本の平均的な関税率はかなり低いために中韓からみて、工業分野では日中韓FTAの利益は少ないのです。そのため、中韓両国と日本の貿易においては農産物のシェアが大変低いにも関わらず、中韓両国は日本とのEPA交渉において農業分野で成果を得ることへ大きな興味を抱いています。
ただ貿易内容を見ると、中国からの輸入のトップは鶏肉やその他食肉の加工品、次いで水産物の加工品ですが、この分野では既に中国の食品安全への懸念から、中国からタイ等への生産拠点の移動が顕著です。また、食材の原産は日本や他国の農産物で、中国では加工されるのみ、といった品目も多くなっています。一方で韓国からの輸入のトップはマグロ、アルコール、野菜調製品(主にキムチ)で、マグロの関税率は3%、アルコールとキムチの増加は単に安い価格で攻められたというよりは、韓国の食文化が日本に浸透した影響といえます。もちろんコメを含め品目別には、センシティブな分野もあるので、仔細な検討が必要ですが、全く交渉が不可能というわけではないかもしれません。
また反面、日本の農林水産物等の輸出においても中国は4位、韓国は5位につけています。特に韓国はこれらの輸入に対して比較的高い関税を課していますので、日中韓FTAの締結が、将来的な日本の農林水産物等の輸出促進、そしてそれによる業界の発展に対して利益を与えることも十分考えられます。
2011年08月17日
今後の食品輸入の可能性について中国準大都市の評価とランキング
中国のいわゆる準大都市(セカンド・ティア・シティ- Second Tier Cities (STC))は、三大都市である北京・上海・広州のさらにその先の中国大陸市場に進出を目指す輸出業者の関心を呼んでいます。中国三大都市で見られる国内及び国際競争の激化、市場の飽和を考えれば当然の流れと思われますが、中国には100万人を超える人口を抱える都市が200都市以上あり、今後の進出先をどの都市にするかと頭を悩ます海外の食品企業は少なくないはずです。中国市場全体では年間10%成長し、これら準大都市(STC)によっては、輸入消費が年間20~40%も拡大しています。STCに関しては、USDA等の様々な団体から50以上もの報告書が発表されていますが、特に今後の輸入食品に関する潜在市場としてのSTCの検証に的を絞ったレポートはまだありません。
当社では、中国の上位STCを検証する必要性を認識しており、とりわけ輸入食品の今後の可能性 -ポテンシャル-について、輸入食品購入の増加傾向をベースにした中国STC上位25都市についてのマルチクライアントレポートを作成しています。STCの評価にあたり、当社の持つ中国及び食品業界での幅広い知見をもとに、特別な基準とこれらの基準に係る有用性を割り出すシステムを考案しました。このレポートは「2011年プロマーSTCプラオリタイザー:海外食品市場のための中国優良都市」というタイトルで間もなく発売になります。
中国STCは大変魅力ある市場で、当社のランキングでは評価基準により三大都市よりもポテンシャルが高くなっています。以下に例を挙げます。
- 過去5年以上の期間、食品輸入に関して三大都市では年間23%足らずの増加に対し、上位25都市では総合的に31%増加している
- ある都市は、全体のポテンシャルにおいて三大都市の1都市より点数が高くなってい
- 中国のSTCの内、9都市が三大都市より成長のポテンシャルが高い
- 中国のSTCの内、14都市が三大都市より富裕度が高く、高価値製品に対し高いポテンシャルを示している
- ほぼすべてのSTCにおいて競争度が三大都市よりも低い
2011年プロマーSTCプラオリタイザーレポートに関する詳細、あるいは中国市場調査に関するお問い合わせはこちらにご連絡ください。inquiry@promarconsulting.com
2011年08月15日
フランスの穀物生産と干ばつの影響
プロマーはEU最大の穀物生産国であるフランスで、小麦・トウモロコシの生産に係る視察調査を行いました。フランスと言えばチーズやワインが有名ですが、毎年約3,500万トンの小麦、1,000-1,500万トンのトウモロコシ、約1、000万トンの大麦などを生産する一大穀物生産国です。今年の春は1976年以来と言われる記録的な干ばつに見舞われ、穀物生産(特に小麦)や畜産業への影響が心配されていましたが、6~7月にかけての降雨により生育環境はある程度改善されました。
フランスの小麦は毎年7~8月に収穫期を迎えます。今年の7月は春の干ばつから一転して例年以上の雨に見舞われ、収穫作業が一時中断するなどの影響が出ていました。収穫期の雨はカビの発生などにより品質の低下を招く恐れがありますが、品質は概ね良好と見られています。ただ、小麦の生産量は前年比6-10%減程度になると見込まれており、作付面積が前年度から増加していることを考えると、干ばつの影響は小さくはないと言えます。一方、秋に収穫を迎えるトウモロコシについては雨の恩恵を受け、作柄は良好です。
フランスでは伝統的に農業協同組合が大きな役割を果たしています。農協が穀物流通・販売の70%を握り、農産品の輸出にも積極的に取り組んでいます。今回調査で訪れたフランス南西部の都市Pauの周辺は主要なトウモロコシ生産地ですが、この地域の代表的な農協Euralisは年間80万トンのトウモロコシを取扱うだけでなく、有名なフォアグラ生産者でもあり、中国等の新興国にも積極的に進出しています。
写真:収穫が中断し、雑草も生えている
2011年07月08日
モザンビークとタンザニアにおけるキャッサバの 生産・加工・流通・消費の現状と政策の課題
プロマーは、農林水産省のODA事業により、農林中金総合研究所と共にモザンビークとタンザニアのキャッサバ産業について8か月間にわたるプロジェクトを実施しました。本事業の目的は、キャッサバの生産から加工、消費に至るまでの現状を調査し、キャッサバ産業の発展可能性と貧困削減に向けた方策を明らかにすることです。
アフリカは世界のキャッサバ生産量の50%を占めており、キャッサバが多くの国で主食として用いられています。しかし、アフリカの食料自給におけるキャッサバの重要性について日本語で書かれた資料は限られており、日本ではその重要性がまだ十分に知られていません。そこで本事業では、キャッサバ産業の現状と今後の発展可能性について、日英の両言語で報告書をまとめました。
キャッサバは、モザンビークとタンザニアにおいて、農村部で栽培、消費される「貧者の食べ物」として見られてきました。しかし、キャッサバは痩せた土壌でも育ち、他の作物に比べ干ばつや病害虫にも強く、収穫まで土中で3~4年保存が可能であるなど優れた特性を備えています。こうした特性から、これまでも農村部の食料安全保障に大きな役割を果たしてきました。
しかし、人々の所得が増加する中、キャッサバはトウモロコシや輸入小麦との競合にさらされています。都市部での需要を掘り起こすには、キャッサバを利用しやすい様に小麦粉のような粉状に加工しなければいけませんが、そのための生産体制や加工施設、輸送設備に多くの課題があります。キャッサバ産業発展のためには、こうした多くの課題を解決しなければなりません。
報告書では、新品種の開発からキャッサバの安定供給、加工による高付加価値化、流通におけるインフラ整備に至るまでバリューチェーンの各課題について整理しました。その上で、キャッサバ産業の発展可能性と貧困削減に資するための方策についてまとめました。
写真: スーパーマーケットへの販売用の「ラリ」と呼ばれるキャッサバ・フレークを乾燥させる協同組合の女性労働者。(撮影場所:モザンビーク)
2011年05月26日
貿易のための援助:タンザニアとエチオピアのコーヒー産業
プロマーは、農林水産省のODA事業により2010年11~12月にかけて、タンザニアとエチオピアのコーヒー産業について現地調査を実施しました。本調査の目的は、貧困削減や食料安全保障の支援に向けて、両国のコーヒー生産から流通に至るまでの基礎的情報を整備することです。調査報告書では、生産者の生計向上や市場機会拡大のための支援方法についてまとめました。
日本はタンザニアとエチオピアの主要なコーヒー輸出相手国ですが、近年日本への輸出量が減少しており、両国のコーヒー産業に大きな影響を与えています。両国のコーヒーの大部分は小規模農家によって生産されており、彼らにとってコーヒー生産は重要な現金収入源ですが、その収入は不安定です。
タンザニアでは、近年日本が求める最高品質のコーヒーの生産が減少しています。キリマンジャロ州はタンザニアの中でも最高品質のコーヒーの生産地ですが、その生産量と品質が低下しています。その主な原因は、価格低下に伴う生産放棄と、コーヒーの木の老木化に伴う豆の小型化です。タンザニア政府は南部の生産拡大に重点を置いており、キリマンジャロ州に対する支援は十分ではありません。
エチオピアのコーヒーの対日輸出は、2008年の3万トンから2009年にはゼロ近くまで落ち込みました。最大の原因は、コーヒー豆から日本の基準値を上回る残留農薬が検出されたことです。しかし、エチオピアではコーヒー生産において農薬をほとんど使用していません。政府は、他作物の運搬に使用された麻袋の使い回しによって残留農薬が混入したと特定し、古い麻袋の焼却を行いました。さらに、その年のスタンプが印字された新しい麻袋以外は使用を認めないなど様々な対策を講じています。しかし、麻袋の供給不足などいくつかの問題がまだ解決されていません。
報告書では、タンザニアとエチオピアのコーヒー産業に関する政策および生産から加工、流通、貿易に至るまでの現状を整理しました。さらに、小規模農家の市場機会拡大を目的とし、援助機関や民間業者がコーヒー産業の主要課題に対してどのような支援が可能かをまとめました。
写真は、2010年のスタンプが印字されたコーヒー運搬用の麻袋です。(撮影場所・日時:エチオピア、2010年11月)
2011年04月22日
津波と原発が日本の食品や食品産業に与えている影響についての英語レビュー 2
津波の被害や放射能汚染についての英文レビュー第二弾をリリースしました。こちらをご参照ください。
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