August 30, 2011

TPP実現を横目に急展開を迎えた日中韓FTA-日本の農業に対する影響は?

TPP実現を横目に急展開を迎えた日中韓FTA-日本の農業に対する影響は?

日中韓FTAは、遡ること1999年には三国首脳会談において共同研究の開始に合意、以来研究が継続されてきました。しかし中韓両国の対日貿易赤字拡大の懸念や農業問題等があって実際の交渉開始にはなかなか至りませんでした。ところが近年、米国やオセアニアが積極的に推し進めるTPPの実現化に向けた議論が盛んになるにつれ、日中韓ともに東アジアの経済圏形成を急ぐ必要が認識されるようになり、日中韓FTA推進の動きが再び活発になっています。

日本の農林水産物輸入では、中国は米国に次ぐ2位で、日本の大幅な輸入超過、韓国からの輸入は13位ですが、同じく大幅な入超です。右表にみるように、日本の平均的な関税率はかなり低いために中韓からみて、工業分野では日中韓FTAの利益は少ないのです。そのため、中韓両国と日本の貿易においては農産物のシェアが大変低いにも関わらず、中韓両国は日本とのEPA交渉において農業分野で成果を得ることへ大きな興味を抱いています。

ただ貿易内容を見ると、中国からの輸入のトップは鶏肉やその他食肉の加工品、次いで水産物の加工品ですが、この分野では既に中国の食品安全への懸念から、中国からタイ等への生産拠点の移動が顕著です。また、食材の原産は日本や他国の農産物で、中国では加工されるのみ、といった品目も多くなっています。一方で韓国からの輸入のトップはマグロ、アルコール、野菜調製品(主にキムチ)で、マグロの関税率は3%、アルコールとキムチの増加は単に安い価格で攻められたというよりは、韓国の食文化が日本に浸透した影響といえます。もちろんコメを含め品目別には、センシティブな分野もあるので、仔細な検討が必要ですが、全く交渉が不可能というわけではないかもしれません。

また反面、日本の農林水産物等の輸出においても中国は4位、韓国は5位につけています。特に韓国はこれらの輸入に対して比較的高い関税を課していますので、日中韓FTAの締結が、将来的な日本の農林水産物等の輸出促進、そしてそれによる業界の発展に対して利益を与えることも十分考えられます。