July 12, 2016

日本企業の注目が集まるケニアのフードバリューチェーン―官民ミッションからの考察

弊社プロマーコンサルティングは、2016年2月、農林水産省の「アフリカにおけるフードバリューチェーンの構築推進事業」の一環としてケニアの食品・農業バリューチェーンでの事業展開に関心のある民間企業等を対象とした官民ミッション派遣を支援しました。飲料、コールドチェーン、貿易、ロジスティクス等様々な分野から、アフリカ市場で既に事業を行っている企業やケニアを新たな進出先として検討している企業等、計約15社が参加しました。現状では、農薬や肥料等の農業投入財やコメを始めとする農作物への投資案件がケニアで進行中ですが、日本からの食品・農業分野への投資はまだ限られています。こうした中、官民ミッションの参加者は、短期的な投資も含めてケニアのフードチェーンに事業の可能性を見出したようです。

日本企業の関心を特に惹きつけた分野として、鶏肉業界が挙げられます。ケニアでは中間所得層の増加や外食産業の発展とともに、鶏肉の需要が伸びています。日本企業のトリドール社が展開するファストフード店では、テリヤキチキンが子供から大人まで、地元の人々の間で人気です。また、ケニア最大の小売業者であるナクマットは、「同じ値段でより価値のあるものを提供する」とのスローガンの下、価格が比較的高い骨なしチキンではなく丸ごとチキン製品で、より幅広い消費者を惹きつけています。ある大手商社からの参加者は、「ケニアの鶏肉事業の潜在性は高い。養鶏場を訪問し、業界についてより詳細な調査を実施したい」と意向を述べました。

官民ミッションにおいて弊社は、関係機関とともに企業訪問等の調整を行い、(機能性)乳製品を提供するビオフードプロダクトやケニアミートコミッション(KMC)、ケニア園芸作物評議会等との意見交換や加工工場の視察を実施しました。参加した日本企業は、生産現場から消費者の選好等に至るまでのケニア食品・農業市場の情報収集や、事業パートナー・潜在顧客の発掘に関心を持っていました。訪問先企業と参加者の間では非常に活発な議論が行われ、双方から多くの意見や質問が挙がりました。

ケニアのバリューチェーンでは安定した質・量の原料調達が課題として残っているといえますが、参加者は加工現場や地元企業との意見交換を通して、農業・食品業界及び小売セクターの魅力を十分に感じたようです。野菜/果物セクターからの参加者は、「園芸作物等輸出産品のバリューチェーンは整備が進んでいる。競争は激しく参入のための戦略をよく練る必要があるが、事業を行うための基盤はある」とコメントしました。

官民ミッションへの参加者はまた、ケニアでの事業展開を後押ししてくれるケニア政府関係者とのコンタクトづくりにも熱心でした。弊社では官民ミッションに加えて、農林水産省等と協力し、官民連携推進のための政策対話及びワークショップを開催し、ワークショップには100名以上の参加者がありました。これらのイベントは、ケニアと日本の参加者同士のネットワークづくりや、連携分野の特定に大きく貢献しました。

官民ミッション中の参加者からは高い関心と前向きな反応を得られ、弊社はケニア食品・農業分野への日本からの投資が今後伸びていくことを期待しています。

写真1) トリドールの照焼きチキンと麺セット

写真2) KMCの加工工場内

写真3) スーパーに並ぶ様々な鶏肉製品