June 18, 2018

フィリピンにおけるサトウキビ産業の状況

2017年12月、弊社はサトウキビ産業に関する調査のためフィリピンを訪れました。フィリピンは歴史的に砂糖生産で有名な国であり、スペインおよび米国統治下時代にはサトウキビプランテーション(大農園)により生産が拡大し、砂糖産業は同国の経済を後押しする重要な産業にまで発展しました。砂糖は主に諸外国に輸出され、米国は主な輸出相手先国でした。現在も砂糖はフィリピンにとって重要な輸出農産物でありそのほとんどは米国に送られています。しかしながら、同国の砂糖産業は最盛期と比べ縮小しており、近年の需給状況がひっ迫しています。弊社はフィリピンの砂糖産業が抱える課題を理解すべく、現地調査を実施しました。

フィリピンの砂糖産業では、国内需要及び米国への輸出枠を満たすことが最優先されています。毎年、砂糖の国内需給はフィリピン農業省管轄下の砂糖統制委員会(SRA)によって予測され、砂糖の供給管理も同委員会によって行なわれています。同委員会は「ケダンシステム」と呼ばれる割当て制度のもと、国内仕向け用、米国仕向け用、及び米国以外の第三国仕向け用と砂糖の割り当てを実施しており、砂糖供給量を管理することによって、国内の砂糖価格の安定及びサトウキビ農家の保護を可能にしています。

以下は、フィリピンの砂糖産業が直面する主な課題です:

• 気候変動による影響(エル・ニーニョ、ラ・ニーニャ、台風等)
• 農地改革によって細分化された圃場
• 労働力不足(特に収穫時期の労働者不足は深刻)
• インフラ整備の遅れ
• 機械化の遅れ
• 民間企業からの融資や政府からの補助金の欠如

また、直近の課題としては2017年にフィリピン議会が決定した加糖飲料への課税が挙げられます。

フィリピンは他のアセアン諸国(インドネシア、タイ等)と比べ糖尿病または肥満有病率は低いものの、700万人のフィリピン人が肥満または糖尿病を患っていると推定されています。加糖飲料の消費拡大とそれに伴う健康への影響が懸念され、議会で課税法案が可決されました。これにより、砂糖及び甘味料(異性化糖など)が含まれる清涼飲料などの加糖飲料に物品税が課されることになりました。加糖飲料への課税により消費者の購入量は減る見込みで、1人あたりの砂糖及び甘味料の消費量もそれに応じて減少するとみられます。

砂糖産業が直面する課題は多々あり、一筋縄では解決できないものばかりです。これに対して、業界関係者は様々な取り組みを実施しています。中には、圃場の生産性及び単収を向上するため地元農家に技術指導を施す製糖企業もあります。また、サトウキビの主要な生産地であるネグロス島では、市場拡大のため商品開発に力を注ぐ製糖企業や、農地造成によるサトウキビ圃場拡大のため政府及び地元農家と協議を行なっている企業もあります。加えて、フィリピン政府もサトウキビ産業の振興策として、2016年からインフラ整備や機械化への支援を本格化しています。

フィリピンが安定的な砂糖生産を達成するためには政府や砂糖業界の長期的な融資、技術改善や生産率向上などの努力が必須です。様々な課題が浮き彫りになった現地調査ですが、各企業による増産及び市場拡大に向けた取り組みも確認することができました。

写真1: サトウキビの収穫風景(ネグロス島)
写真2: サトウキビをのせ搬入に列をなすトラック
写真3: 低GI値(各食品/食材によって引き起こされる血糖値の上昇度合いを示す値)砂糖及びサトウキビ由来の抗酸化サプリメント(サガイ・セントラル社開発)